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科学的根拠:クリニック・心療内科向け

待合室での患者行動の変化、生理指標による測定、
心療内科・精神科への影響。

自然映像 > テレビ
がん外来の患者117名の比較研究で、自然映像群のみ気分が改善
脈拍・血圧が有意に改善
検査前の視聴で自律神経機能も改善(n=130)
音量ゼロでも有効
視覚刺激のみでα波増強を確認

待合室での実証研究

ラボではなく、実際の医療機関の待合室で効果が測定された研究です。

待合室で流す映像は、「何を映すか」で、患者さんの気分への働きが変わります。

がん外来の待合室で、端末も視聴時間もそろえたまま、映像の中身だけを変えて比べた研究があります。自然映像を見た患者さんだけが、気分の快さが有意に高まり、高ぶり(覚醒度)が有意に下がりました。テレビニュースを見た群と、何も見なかった群には、有意な変化はありませんでした。

さらに、入院中のせん妄患者を対象にした無作為化比較試験でも、自然の映像を見た患者の70%が視聴中に落ち着きを取り戻したのに対し、通常のケアのみの群では29.7%にとどまりました(p<.001)。

風景帖は、「何も流さない」待合室にも、ニュースを流す待合室にも、全国で撮り下ろした実写の自然映像という選択肢を加えます。

パイロット比較研究(2024年)

がん外来の待合室で、自然映像・テレビニュース・無提示を比較

Halámek, F. et al. (2024) — Frontiers in Psychology, 15, 1392397
対象: チェコ・マサリク記念がん研究所の外来待合室、がん患者117名
10.5インチのタブレットにヘッドフォンを付けた個別視聴で、森林散策動画・海映像・テレビニュース・何もなし(コントロール)の4群に分け、端末・音量・視聴時間・視距離をそろえたまま、映像の中身だけを変えて感情状態を視聴前後で比較した、パイロット比較研究です(著者は "pilot field experiment" と記述)。

自然映像(森林・海)を視聴した群のみ、感情の快(valence)が有意に改善し、覚醒度(arousal)が有意に低下(=気分が良くなり、落ち着いた)。
テレビのニュースを流した群とコントロール群には有意な変化なし
※疼痛や不安といった副次指標には群間の有意差は確認されていません。

本研究は10.5型タブレット+ヘッドフォンでの個別視聴(全群に音声あり)であり、待合室の大型モニタ・音量ゼロ運用とは視聴環境が異なります。また部分ランダム化のパイロット研究です。「機器や音ではなく、映像の中身が働きを変えた」ことを、条件をそろえて示した研究として引用しています。
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論説(ナラティブレビュー)

待合室に「何を流すか」への、医師からの提言

Fryburg, D. A. (2021) — Journal of Patient Experience
医療環境の待合室メディアが患者・スタッフに与える心理的影響を、医師が論説(ナラティブレビュー)としてまとめたものです。新規の実験データを持つ研究ではありません。

著者は、待合室のテレビは静止画や壁の装飾よりも人の注意を集めやすいと指摘したうえで、ニュースのようなネガティブ・中立的なメディアは撤去すべきだと提言しています。査読誌に掲載された、医療現場の医師による提言です。

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系統的レビュー(2025年)

こうした効果は、一つの研究にとどまりません

Effects of video-based natural restorative environments on mental health: a systematic review (2025) — BMC Public Health, 25
対象: 2018〜2024年に発表された26研究・健常な成人あわせて約12,700名
2Dの画面で自然の映像を見ることの心理的効果について、26件の研究をまとめた2025年の系統的レビューです。

2Dの画面で自然の映像を見ることが、気分の調整・ストレスの軽減・回復感に、短期的に良い働きを持つことが示されています。手軽に取り入れられる方法として位置づけられています。

対象は健常成人であり、効果は短期的なものです。待合室の患者への効果を直接実証したものではありません。
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生理指標による測定

自然映像が脈拍・血圧・自律神経・脳波に与える影響を、客観的な生体計測で示した研究です。

ランダム化比較試験・2020年

検査前の安静時に自然映像を視聴すると、脈拍・血圧・心拍変動が有意に改善する

曽我部正弘, 岡久稔也, 中園雅彦, 高山哲治
「映像・照明を用いた視覚刺激による distraction の上部消化管内視鏡検査受診者への影響」
日本消化器がん検診学会雑誌, 58(6), 983-995(2020年)
UMIN臨床試験登録番号: UMIN000018579
対象: 上部消化管内視鏡検査の受診者 n=130(対照群65名/映像群65名)
検査前の個室で、自作の自然風景動画(山・川・滝・湖・夕焼けなど)を42型液晶テレビにLED間接照明を併用して10分間視聴させる群と、安静のみの対照群に無作為に割り付け。脈拍・血圧に加え、心拍変動(HRV)解析による自律神経機能を客観指標として測定しました。

安静のみの群と比べ、映像視聴群では検査直前の各指標が有意に良好でした:
・脈拍:有意に低下(p < 0.001)
・血圧:有意に低下(p < 0.05)
・Log HF power(副交感神経優位=リラックスの指標):有意に高い(p < 0.05)
・LF/HF(交感神経/副交感神経比):有意に低い(p < 0.001)
この差は検査終了10分後にも残っていました(脈拍 p < 0.05、Log HF power p < 0.05)。

受容性調査(映像群のみ・0〜100 VAS):
有用性 72.7 / 満足度 68.7 / 次回も使いたい 73.1

本研究は映像とLED間接照明を併用した複合的な介入のため、映像単独の寄与は分離できません。また実施場所は検査室に隣接した個室であり共用待合室ではなく、対象は服薬者・精神科通院歴のある者を除いた健診受診者(平均51.6歳)です。検査中の脈拍・血圧は両群とも上昇し群間差はなく、著者は「身体的負荷への軽減効果は十分でない」としています。「処置前の安静時に自然風景映像を見る」という設定が風景帖の利用環境に近い、日本のランダム化比較試験(利益相反なしと明記)として引用しています。
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脳波(EEG)

音のない自然動画を2Dモニタで見るだけで、リラックスに関連するアルファ波が増強

Grassini, S. et al. (2022) — Frontiers in Psychology, 13, 871143
対象: 健常な大学生24名。17インチLCD・視距離約2m・VRゴーグル不使用
音声のない自然動画・都市動画・中立的な映像の視聴中の脳波をEEGで測定。通常の2Dモニタでの視聴条件で、VRゴーグルは使用していません。

音のない自然動画の視聴中、中心領域のアルファ波のパワー密度が有意に増加し、主観的なリラックス感が、都市映像・中立映像のいずれよりも有意に高まりました。音がなくても、視覚だけでリラックスにつながることを示しています。

別の研究でも、55インチの大画面で実写の自然映像を15分見た場合に、ネガティブな気分が下がり回復感が高まることが示されています(Bielinis 2020)。いずれも健常成人・実験室での短期的な測定です。
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心療内科・精神科向け:待合室の視覚環境と精神症状

「共有スペース型待合室」を持つ心療内科・精神科では、流れるコンテンツの質が患者の精神状態に直接影響します。

RCT(n=70)

スクリーン型自然映像で興奮スコアが有意に低下

Nicholas, M. et al. (2023) — npj Digital Medicine, 6:202
対象: カナダの三次救急病院(Royal Columbian Hospital)、せん妄と診断された入院患者70名
介入群にはHDスクリーンで自然風景のアニメーション映像(MindfulGarden)を4時間提示し、対照群は通常ケアのみとした。主要評価項目はRichmond Agitation-Sedation Scale(RASS)。副次評価項目として臨時薬(鎮静薬・抗精神病薬等)の投与率を測定した。

4時間の平均興奮スコア(RASS)は介入群0.3 vs 対照群0.9(p = 0.01)。臨時薬の投与を受けた患者の割合は介入群48.6% vs 対照群74.3%(p = 0.03)。ただし年齢・性別で補正した多変量解析では、臨時薬の差は統計的有意には至りませんでした。

対象はICU等の急性期せん妄患者であり、外来待合室とは環境が異なります。使用されたMindfulGardenは患者の動きや音に応じて映像内容を動的に変化させるシステムで、風景帖の定時再生方式とは異なります。オープンラベル試験(評価者の盲検化なし)。著者の1名がMindfulGarden社に3%未満の株式持分を持つ利益相反が開示されています。
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RCT・クロスオーバー(n=60)

うつ・不安障害の患者に自然画像による気分改善を実証 ── 日本の研究

Mizumoto, T. et al. (2024) — Journal of Affective Disorders, 356, 257-266
対象: ある精神科外来の患者、DSM-5でうつ病(30名)または不安障害(30名)と診断
27インチディスプレイで緑をテーマにした自然画像を3分間提示し、都市画像と比較するランダム化クロスオーバー試験。研究目的は参加者にも実験者にも伏せられた(盲検設計)。

うつ群・不安群ともに「快適さ」「リラックス」「活力」の3指標すべてが有意に改善(多くがp < 0.001、うつ群の活力のみp = 0.006)。効果量はうつ群でd=0.48〜0.93、不安群でd=0.83〜0.92。うつ症状の重症度は効果に影響しませんでした。

介入は静止画像を3分間提示したものであり、動画ではありません。心拍変動(HRV)には有意な変化がなく、生理指標での改善は確認されていません。約9割が抗うつ薬を服用中の外来患者を対象とした実験室測定で、実際の施設環境での検証ではありません。
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理論的基盤

自然映像がなぜ人間の心身に作用するのか。その背景にある3つの主要理論です。

ストレス低減理論(SRT)

自然環境の視覚パターンは、進化的に獲得された「安全信号」として脳に認識され、認知的処理を経ずに副交感神経を活性化させる。映像であってもこの反応は生じる。

Roger Ulrich, 1991

注意回復理論(ART)

自然環境に特有の「ソフト・ファシネーション」(風に揺れる木々、水面のきらめき等)が、日常で酷使される指向性注意を休息させ、認知リソースを回復させる。

Kaplan & Kaplan, 1989

バイオフィリア仮説

人間には自然環境とのつながりを求める生得的な傾向がある。都市化された環境ではこの欲求が満たされず、慢性的なストレスの一因となっている。

E.O. Wilson, 1984

これらの研究と風景帖の対応

上記の研究は、風景帖のサービス設計を直接的に裏付けています。

なぜ実写にこだわるのか

待合室での効果が実際に確かめられた研究には、実写の自然映像を用いたものがあります(がん外来での比較研究=Halámek、内視鏡検査前のランダム化比較試験=曽我部ら)。風景帖は、AI生成やストック素材ではなく、全国各地で実際に撮影した実写映像だけで構成しています。

なぜ「音なし」でも成立するのか

Grassini (2022) のEEG研究は、音がなくても視覚刺激のみでアルファ波が増強されることを示しています。診察の呼び出しを妨げない音量ゼロ運用は、科学的にも合理的です。

なぜ、特別な機器がいらないのか

風景帖の映像は、待合室に置いたモニタで流すだけです。ゴーグルの装着も、来院された方の操作も要りません。待合室にいる誰もが、意識せず自然に目にできること——それが、共用空間には向いています。

なぜ「テレビの代わり」なのか

Halámek (2024) は、テレビニュースを流した群には気分の変化がなく、自然映像を流した群のみ改善が見られたことを示しています。映像の内容が重要なのです。

映像品質への技術的こだわり →

参考文献

本ページで引用した論文の一覧です。

Halámek, F. et al. (2024). Enhancing patient well-being in oncology waiting rooms. Frontiers in Psychology, 15, 1392397. PubMed
Fryburg, D.A. (2021). What's Playing in Your Waiting Room? Journal of Patient Experience. PMC
Effects of video-based natural restorative environments on mental health: a systematic review. (2025). BMC Public Health, 25. PMC
Waszynski, C.M., Milner, K.A., Staff, I. & Molony, S.L. (2018). Using simulated family presence to decrease agitation in older hospitalized delirious patients: A randomized controlled trial. International Journal of Nursing Studies, 77, 154-161. PubMed
曽我部正弘, 岡久稔也, 中園雅彦, 高山哲治 (2020). 映像・照明を用いた視覚刺激によるdistractionの上部消化管内視鏡検査受診者への影響. 日本消化器がん検診学会雑誌, 58(6), 983-995. J-STAGE
Grassini, S. et al. (2022). Watching Nature Videos Promotes Physiological Restoration. Frontiers in Psychology, 13, 871143. Frontiers
Bielinis, E. et al. (2020). Effect of Viewing Video Representation of the Urban Environment and Forest Environment on Mood and Level of Procrastination. International Journal of Environmental Research and Public Health, 17(14), 5109. PMC
Nicholas, M., Wittmann, J., Norena, M., Ornowska, M. & Reynolds, S. (2023). A randomized, clinical trial investigating the use of a digital intervention to reduce delirium-associated agitation. npj Digital Medicine, 6, 202. PMC
Mizumoto, T., Ikei, H., Hagiwara, K. et al. (2024). Mood and physiological effects of visual stimulation with images of the natural environment in individuals with depressive and anxiety disorders. Journal of Affective Disorders, 356, 257-266. PubMed
Ulrich, R.S. (1991). Effects of interior design on wellness. J Health Care Interior Design, 3, 97-109. PubMed
Kaplan, R. & Kaplan, S. (1989). The Experience of Nature. Cambridge University Press.
Wilson, E.O. (1984). Biophilia. Harvard University Press.

本ページに記載された研究結果は、それぞれの実験条件下で得られたものであり、すべての環境・対象者に同一の効果を保証するものではありません。多くの研究は短期的な介入効果の測定であり、長期的な持続効果については今後さらなる検証が必要です。また、一部の研究は健常成人を対象としており、すべての患者層に対する効果を直接的に実証したものではない点にご留意ください。風景帖は医療機器・医薬品ではなく、疾病の治療を目的としたものではありません。

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